第6回RAとIL-6研究会
2017年11月11日(土) 第6回RAとIL-6研究会に参加し、以下の講演を聴いてきました。印象に残ったコメントを記載します。
関節リウマチ治療における肝障害とマネジメント
福島赤十字病院 内科・消化器内科 宮田 昌之先生
この講演は最後の数分しか聴講できませんでした。
FIB-4 index:血液生化学的検査データ(ALT、AST、血小板数)を用いた肝線維化予測値でメトトレキサート(MTX)による肝線維化の推測にも有用。
算出方法
(年齢×AST)/(血小板数[1000/μL]×(ALT)1/2)
https://www.eapharma.co.jp/medicalexpert/product/livact/fib-4/calculator.html
関節リウマチに伴う社会的損失と治療介入の意義
産業医科大学 公衆衛生学教室 藤野 善久先生
健康とは労働者個人が保有する経営資源(根幹資源)である。
「プレゼンティーイズム(presenteeism)」:調子が悪くても、無理して出勤する状態
「アブセンティーイズム(absenteeism)」:欠勤
プレゼンティーイズムの方が、仕事の能率が低下するため、むしろ、アブセンティーイズムよりも経済的損失が大きいということがわかっている。すなわち、無理して出勤させるよりも、休ませたほうが損失を防げる場合がある。
J Occup Environ Med. 2004;46:398-412
STD(short-term disability) 短期(3-6ヶ月)就業不能
Absence 欠勤
RX 薬の処方
ER 救急
Outpatient 外来
Inpatient 入院
関節リウマチ患者の就業阻害要因を見ると、疾患そのものの障害の影響ではなく、個人の状態と業務内容のミスマッチによるところが大きいことがわかった。
良好な就業環境で仕事ができているケースでは、患者の健康と回復に寄与し、身体的なQOLにも好影響を与えているという報告もある。
関節リウマチ患者の就業継続には、治療だけでなく就業内容に配慮すること(両立支援)も重要である。
WFun (Work Functioning Impairment Scale) とは、産業医科大学で開発された、健康問題による労働機能障害の程度を測定するための調査票である。トシリズマブ投与により、WFunが改善したという報告を提示していた。
http://www.uoeh-u.ac.jp/kouza/kosyueis/wfun/entry1.html
SURPRISE studyを中心にトシリズマブによる関節リウマチ治療を考える
慶応義塾大学医学部 リウマチ・膠原病内科 竹内 勤先生
MTX効果不十分の関節リウマチ患者において、トシリズマブ(TCZ)追加投与またはTCZ単独への切り替え投与を比較検討した試験。MTX効果不十分なRA患者233例を、TCZ追加群(118例)、または、TCZ単独群(115例)に割り付けた。
Ann Rheum Dis. 2016;75:1917-1923
DAS28-ESR寛解率は24週時点では両群間に差があったが、それ以降は徐々に差がなくなり、52週後にはTCZ追加群72.2%、TCZ単独群70.3%となった。
関節破壊進行に関しては、関節破壊が著しく進行した患者(clinically relevant radiographic progression rates:ΔmTSS≧3)の割合は、TCZ追加群7.4%、TCZ単独群15.3%と、TCZ追加群の方が低かった。
重篤な副作用の発現率はTCZ追加群13.9%、TCZ単独群8.1%と、TCZ単独群の方が低かった。
2年目にTCZ追加群、TCZ単独群ともにTCZを中止し、それぞれ、MTX投与のみ、Drug Freeで1年間経過観察したところ、Low disease activityをKeepできたのはTCZ追加群→MTX投与群で60%、TCZ単独群→Drug Free群で30%であった。
免疫フェノタイプから見るトシリズマブ治療の可能性
産業医科大学医学部 第1内科学講座 田中 良哉先生
最初の抗TNF阻害剤が効果不十分であった場合、2番目の生物学的製剤は別の抗TNF阻害剤がよいか?抗TNF阻害剤以外の生物学的製剤がよいか?
JAMA. 2016;316:1172-1180
2番目の抗TNF阻害剤より、抗TNF阻害剤以外の生物学的製剤の方が有効であった。
産業医大のデータからみると、2番目の生物学的製剤の有効性は下記のような結果であった。
TNF→TCZ>TNF→TNF>TNF→ABT(アバタセプト)
免疫フェノタイプを調べることにより、どの薬が有効かを予測することが可能かもしれない。
MTX関連リンパ増殖性疾患(methotrexate-associated lymphoproliferative disorder ;MTX-LPD)について
産業医大では48例のMTX-LPDを経験し、24例はMTX中止で自然退縮し、24例で持続したため、治療が必要になった。田中先生の私見として、MTX-LPDではIL-6受容体の発現が認められるため、MTX-LPD退縮後の関節リウマチに対し、生物学的製剤としてはABTよりTCZの方が良いかもしれないと述べられていた。
トシリズマブ皮下注〜投与期間短縮オブションをいかに使いこなすか〜
NTT西日本大阪病院 アレルギー・リウマチ・膠原病内科 緒方 篤先生
トシリズマブの有効性を体重別で比べた場合
体重60kg以上 皮下注<点滴
体重60kg未満 皮下注>点滴
体重60kg以上では2週に1回の皮下注では効果不十分となる可能性あり→そこで週1回投与!
2週に1回トシリズマブを皮下注していても効果不十分の患者を2群(週1回投与群、または、2週に1回投与群)に分けて比較検討した。
12週後のDAS28ESR改善率は週1回投与群が、2週に1回投与群に比べ有意に高かった。
有害事象は両群で有意差はなかった。
トシリズマブ2週に1回投与が効果不十分と判断するポイント
トシリズマブ投与後8週経過していてもCRP陰性化していない場合は、24週経過していてもCRPが陰性化しない可能性が高い。
トシリズマブ投与(2週に1回)8週目でCRP陰性化しない場合→週1回投与
ただし、CRP上昇が持続する場合は感染症がくすぶっている可能性があるので、要注意。、
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