後藤内科医院、リウマチ科、内科

HUMIRA National Symposium 2017

HUMIRA National Symposium 2017

 2017年10月21日(土) 台風21号が接近中のときにHUMIRA National Symposium 2017に参加してきました。以下の講演を聴いてきました。印象に残ったコメントを記載します。

 

抗TNF抗体製剤の実力 -TNF産生細胞に対する効果を踏まえて- 

九州大学病院別府病院院長 堀内 孝彦先生

 
 TNFには血液中などに存在する可溶性TNFとマクロファージやリンパ球などの炎症細胞の細胞膜上に表出される膜型TNFが存在する。TNF阻害剤は可溶性TNFを中和する作用と膜型TNFに結合し、TNF産生炎症細胞を破壊することにより薬理作用を発揮する。TNF阻害剤によるTNF産生炎症細胞を破壊する作用機序としては以下3つが関与している。
 1)抗体依存性細胞障害(ADCC)
 2)補体依存性細胞障害(CDC)
  上記の2つの作用機序はインフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブでは強いが、エタネルセプトやセルトリズマブでは非常に弱いことがわかっている。
 3)直接効果によるアポトーシス
  強さの程度:インフリキシマブ=アダリムマブ>ゴリムマブ>セルトリズマブ>エタネルセプト

 

 自己免疫応答を抑制するリンパ球として、制御性Tリンパ球(regulatory T lymphocytes:Treg)が知られている。関節リウマチではTregの機能が低下しているが、インフリキシマブやアダリムマブなどの抗TNF抗体製剤は低下したTregの機能を回復させることが知られている。一方、エタネルセプトではTreg活性化作用の報告はない。

 

乾癬性関節炎の関節病変とTNF阻害製剤の効果

東邦大学医学部内科学講座膠原病学分野 亀田 秀人先生


 乾癬性関節炎に対し、メトトレキサートの効果はプラセボと比較し、有意差は認められなかった。

 

 乾癬性関節炎に対する抗TNF阻害製剤の効果はどの薬剤を用いてもほぼ同等である。

N Engl J Med 2017;376:957-70.

 

 乾癬性関節炎で最初に使用すべき生物学的製剤はTNF阻害剤である。

2015の乾癬性関節炎に対するEULARの推奨

1. 治療は定期的なモニタリングおよび治療の適切な調整により、寛解、または低疾患活動性を達成することを目標とすべきである。
2. 乾癬性関節炎患者では、非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAID)は筋骨格系の徴候および症状を緩和するために使用することができる。
3. 特に疾患活動性が高い乾癬性関節炎患者(多発腫脹関節を有する末梢関節炎例、炎症による構造的破壊が見られる例、ESR / CRP高値例、関節外症状のある例)では、従来型の合成抗リウマチ剤(csDMARDs)は早期に使用を考慮すべきで、その中でもメトトレキサートは皮膚症状を有する例で有用である。
4. グルココルチコイドの局所注射は、乾癬性関節炎における補助療法として考慮される。全身グルココルチコイドは、最小有効用量を注意して使用可能である。
5. 少なくとも一つのcsDMARDが効果不十分な末梢関節炎患者では、生物学的抗リウマチ剤(bDMARD)を用いた治療、通常TNF阻害剤、を開始する。
6. 少なくとも一つのcsDMARDが効果不十分な末梢関節炎患者でTNF阻害剤が使用困難な場合、IL12/23またはIL17を阻害するbDMARDの投与を考慮すべきである。
7. 少なくとも一つのcsDMARDが効果不十分な末梢関節炎患者でbDMARDが使用困難な場合、、PDE4阻害剤などの標的合成抗リウマチ剤(targeted synthetic DMARD)の投与を考慮すべきである。
8. 活動的な付着部炎および指趾炎に対して、NSAIDまたは局所グルココルチコイド注射への効果が不十分な関節炎患者では、bDMARDによる治療を考慮すべきで、まずはTNF阻害剤から開始すべきである。
9. 活動性の体軸性の疾患を有する(脊椎病変)患者において、NSAIDの効果が不十分な場合、bDMARDによる治療を考慮すべきで、まずはTNF阻害剤から開始すべきである。

10. bDMARDに適切に応答しない患者では、TNF阻害剤の切り替えを含め、他のbDMARDへの切り替えを、検討すべきである。

Ann Rheum Dis 2016;75:499-510

 

今、リウマチ医が行うべき治療 -関節破壊抑制とTreatment Holidayの実際-

産業医科大学医学部第1内科学講座 田中 良哉先生


 早期関節リウマチ患者を対象にした研究:アダリムマブの休薬群では、アダリムマブ継続群に比べ、疾患活動性はやや上昇したが、感染症などの有害事象は減少した。


RMD Open 2016;2: e000189.

 

 罹病期間が長い関節リウマチ患者を対象とした研究:DAS28<1.98の深い寛解(deep remission)にまで持っていくと、アダリムマブ休薬後の再燃例が少ない


Ann Rheum Dis 2015;74:389-395.

 

 Bio-freeへの指針(田中先生、Dr. Smolen、Dr. Emeryらの見解)
 1)ステロイド不使用
 2)標準的な寛解を達成すること
 3)6ヶ月以上寛解を維持すること
 4)6ヶ月以上DMARDSを継続すること
 5)Deep Remissionの達成
 6)抗CCP抗体陰性
 7)関節エコーで滑膜炎の所見なし


Conclusions : Sustained clinical response is more likely in patients who achieved deep remission prior to ETN withdrawal.
Ann Rheum Dis 2016;75:188-189.

 

RA最新治療戦略 -Evidenceの背景を読み解く-

慶応義塾大学医学部リウマチ・膠原病内科 竹内 勤先生


 日本人は欧米人に比べ、細胞内メトトレキサート(MTX)濃度が60%高い。
 やせ型の人はMTXによる肝障害が置きやすい。

RMD Open. 2017 ;3(1):e000363.

 

 アダリムマブとMTXの併用に関する研究:アダリムマブとMTXの併用時に、MTX 7.5mg投与群はMTX 20mg投与群と比べ、非劣性を示せなかった。

 

 MTX投与量が少ないと、抗アダリムマブ抗体ができやすい。

  抗アダリムマブ抗体出現率
アダリムマブ+MTX 2.5mg 21%
アダリムマブ+MTX 5mg 13%
アダリムマブ+MTX 10mg 6%
アダリムマブ+MTX 20mg 6%

Ann Rheum Dis 2015;74:1037-1044.

 

 TNF阻害剤効果不十分例に対して、別のTNF阻害剤に変更すべきか、TNF阻害剤ではない生物学的製剤にすべきか?JAMAの報告では、TNF阻害剤ではない生物学的製剤に変更したほうが有効と言う結果だった。


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