後藤内科医院、リウマチ科、内科

JAK ACADEMY in 名古屋

JAK ACADEMY in 名古屋

 2017年9月2日(土) JAK ACADEMY in 名古屋に参加してきました。以下の講演を聴いてきました。印象に残ったコメントを記載します。
 今回は主にトファシチニブに関する内容でした。

 

関節リウマチにおけるJAK阻害剤の意義 

医療法人社団博恵会 桃原 茂樹先生

 


 トファシチニブは免疫担当細胞であるTリンパ球、Bリンパ球のみならず、樹状細胞の機能も抑制する実験結果を提示されました。

 


JAKSTAT. 2013 Oct 1;2(4):e27638
 トファシチニブはJAKを阻害することにより、プロスタグランディンやエンドセリン等の産生を抑制し、痛みを抑える可能性があると示唆されていました。

 


Lancet 2017; 390: 457-68
 この研究はメトトレキサート不応性の関節リウマチ患者(平均罹病期間 5-6年)1146例を、トファシチニブ単独群、トファシチニブとメトトレキサート併用群、アダリムマブとメトトレキサート併用群の3群に分けて、1年間治療効果、有害事象について検討した国際二重盲検試験(ただし、日本人は含まれていません)です。

 



 6ヵ月後、12ヵ月後ともにACR20, ACR50, ACR70の改善率はトファシチニブとメトトレキサート併用群、アダリムマブとメトトレキサート併用群では差はなかったが、トファシチニブ単独群ではやや劣るという結果でした。

 


 有害事象は3群で大きな差はありませんでしたが、トファシチニブ単独群で2例死亡例がありました。1例は腎臓感染症から敗血症で死亡され、もう1例はインフルエンザ罹患後の肺炎で死亡されました。

 



 トファシチニブは汎発性脱毛症にも有効という報告例を紹介されていました。

 


 トファシチニブ、トシリズマブには消化管穿孔のリスクがあるので、腸憩室症の有無をチェックする必要があるとのことで、今後注意したいと思います。

 

 関節リウマチの発症に歯周病菌Porphyromonas gingivalisが関連しているとのことでした。
 http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2015/150413_1.html
 http://www.niigata-u.ac.jp/news/2017/33932/
 https://www.jstage.jst.go.jp/article/perio/54/1/54_11/_pdf

 


 最近注目の癌に対する免疫療法(免疫チェックポイント阻害療法:抗PD-1抗体 ニボルマブなど)後に、関節リウマチやリウマチ性多発筋痛症を発症した症例が報告されたそうです。

 


 関節リウマチの評価に関しては、超音波に頼らず、関節所見を大事にすべきという提言でした。

 


J Arthroplasty. 2017 Sep;32(9):2628-2638
Arthritis Rheumatol. 2017 Aug;69(8):1538-1551
Arthritis Care Res (Hoboken). 2017 Aug;69(8):1111-1124
 人工膝ならびに股関節置換術の周術期の抗リウマチ薬の休薬についてのガイドラインです。この論文は3誌に同時掲載されました。

 


 メトトレキサートやサラゾスルファピリジンなどの従来からあるDMARDS(抗リウマチ薬)は周術期でも継続すべきということです。生物学的製剤に関しては、表に記載された期間(たとえば、エタネルセプトの場合、2週間)、投薬を中止した後に手術をすべきで、投薬再開時期は少なくとも手術後2週間以上経過し、創傷治癒遅延、手術部位や全身の感染症がないのを確認した後ということです。トファシチニブは手術前7日間休薬すべきとされています。
 ステロイドに関しては、プレドニゾロン(原文ではプレドニゾン) 16mg以下であれば、以前提唱された「手術によるストレスに対応するための手術時のステロイド増量」は必要なく、維持量を継続すればよいと推奨されていました。

 

実臨床から見たJAK阻害薬の実力

慶友整形外科病院 整形外科 綾部 敬生先生

 

 同院の治療目標は、CRP、血沈、MMP-3、3者とも正常にすることで、3者とも正常化する患者の割合は3割程度で、他の寛解基準と同程度ということでした。

 

 regulationの関係で、80例のゼルヤンツ使用例についての詳細な報告がされませんでしたが、そのうち40%はBio-naiive(生物学的製剤未使用例)とのことでした。

 

 トファシチニブとメトトレキサート併用例では、寛解達成後に、メトトレキサート中止可能例があるということです。

 

 トファシチニブは二次無効例が少ないとの報告でした。

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