ベーチェット病の最新治療について説明します。
ベーチェット病の治療2020

ベーチェット病の治療2020


ベーチェット病の治療2020

ベーチェット病の治療2020

 ベーチェット病診療ガイドライン2020とベーチェット病の皮膚粘膜病変診療ガイドライン(2018)の治療に関する記述をまとめてみました。

口腔内アフタ性潰瘍の治療


 ベーチェット病の軽症の口腔内アフタ性潰瘍に対しては、まず、清潔・口腔内洗浄指導を行い、ステロイド外用薬(トリアムシノロン貼布錠、デキサメタゾン軟膏など)塗布を行うように強く推奨されている。さらに、粘膜保護薬であるレバミピド、スクラルファートの投与が推奨されている。
 中等症、重症の口腔内アフタ性潰瘍に対しては、薬剤の全身投与が推奨されている。コルヒチン(白血球の遊走を抑える作用をもつ)やアプレミラストの投与がまず推奨されている。抗菌薬(ペニシリン)投与やステロイドの全身投与に関しては、治療の選択肢の一つとして考慮する。TNF 阻害薬は現時点では腸管、神経、および血管病変、眼発作を有するベーチェット病に対してしか保険適応がないことから、口腔内アフタ性潰瘍に対しては、適応を慎重に考慮する必要がある。

アプレミラスト

 アプレミラスト(商品名:オテズラ)は2019年9月「局所療法で効果不十分なベーチェット病による口腔潰瘍」に対する保険適応を取得した。

N Engl J Med 2019;381:1918-28.

 アプレミラスト投与により口腔潰瘍の個数がプラセボに比べ減少した。副作用の主なものは下痢、嘔気、頭痛。
 アプレミラストの詳しい情報はこちらから

外陰部潰瘍の治療


 ベーチェット病の外陰部潰瘍に対する治療としては、ステロイド外用がfirst line の治療として推奨されている。さらに、コルヒチンの投与を推奨されている。難治性の外陰部潰瘍に対しては、ステロイド全身投与が治療の選択肢の一つとして提案されている。TNF阻害薬は標準的な治療に抵抗性の外陰部潰瘍に限り選択肢の一つとして考慮してもよいと考える。しかしながら。TNF阻害薬は現時点では外陰部潰瘍には保険適応がないことから、その適応を慎重に考慮する必要がある。

結節性紅斑の治療


 まずは軽症〜重症どのレベルであっても、ベーチェット病の結節性紅斑に対してステロイド外用がfirst line の治療として推奨されている。結節性紅斑の疼痛に対する効果も期待できること、他に選択肢が少ないことを勘案し、ベーチェット病の結節性紅斑に対して非ステロイド性抗炎症薬(インドメタシンなど)を考慮してもよい。ただし、消化管病変がある際に注意を要する。ベーチェット病の結節性紅斑に対してミノサイクリン(抗菌作用に加え抗炎症作用を有している)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS,ダプソン:好中球の作用を抑制する作用がある)を選択肢の1 つとして考慮してもよい。中等度の結節性紅斑に対してコルヒチン投与やステロイド全身投与(メチルプレドニゾロン筋肉内注射)が推奨されている。TNF阻害薬は結節性紅斑に効果が高いと考えられる。ただし、TNF阻害薬は効果も高いが、感染症などの副作用やコストの面から、重症例や従来の免疫抑制療法で難治な症例に限定して使用することが勧められている。

毛包炎様皮疹の治療


 ベーチェット病の毛包炎様皮疹(ざ瘡様皮疹)に対してステロイド外用薬塗布が提案されている。さらに、コルヒチンの投与を推奨されている。また、毛包炎様皮疹に対して抗菌薬(アジスロマイシン)内服を考慮してもよいとされている。

眼病変の治療:眼発作時の治療


 軽度の前眼部の炎症に対しては点眼治療を行う。副腎皮質ステロイド薬(0.1% ベタメタゾン点眼液など)と散瞳薬(トロピカミド・フェニレフリン塩酸など)の点眼を用いる。前房蓄膿が生じるような強い虹彩毛様体炎には点眼治療に加え、副腎皮質ステロイド薬(デキサメタゾン 2 mgなど)の結膜下注射を行う。
 網膜ぶどう膜炎型(後眼部)には水溶性ステロイド薬(デキサメタゾン 4 mgなど)の後部テノン嚢下注射を行う。眼圧上昇、眼球穿孔に注意が必要である。後極部の発作に対しステロイド(デカドロン注 8mg)点滴静注やステロイド内服(プレドニゾロン 30〜40mg)を行う方法もある。

眼病変の治療:眼発作抑制の治療


 視機能に影響しない軽い眼炎症発作であると判断される場合は治療不要だが、眼発作が頻発する症例では、その再発抑制治療が必要となる。通常、コルヒチンから導入し、低用量のステロイドを併用する事もある。副腎皮質ステロイド薬内服に関しては、本邦では1970年代に単剤治療に関する多くの臨床研究が行われた。その結果、漸減中に眼炎症発作が誘発されるため、むしろ視力予後が悪いことが示され、以降その使用は慎むべきであるとされてきた。しかし、1990 年代には再評価の見解がみられ、低用量で増減せずに使用した場合、眼炎症発作は誘発されず発作抑制に有効であるとされ、多少見直されてきている。



 効果不十分(発作が6か月間以内にみられた状態)と判断されればシクロスポリン(Step 2A)またはインフリキシマブ、アダリムマブ導入(Step 2B)を検討する。重症例(眼発作を頻発する症例、後極部に眼発作を生じる症例、視機能障害が著しく失明の危機にある症例)では早朗のTNF阻害藁導入を検討する。

腸管ベーチェット病の治療


 腸管ベーチェット病において、穿孔、大量出血、膿瘍形成、高度の狭窄をきたす症例では外科的手術の絶対適応であり、禁食とし、中心静脈栄養を急性期に短期間用いる。内科的治療に抵抗する難治例、瘻孔の合併などにより著しくQOLが低ドした症例は相対的手術適応となる。
 軽症〜中等症では5-ASA製剤が寛解導入に有効な場合がある。5-ASA製剤の投与量はメサラジン2.25g〜4.0g/day、あるいはサラゾスルファピリジン3〜4g/dayとする。

 腸管ベーチェット病の活動性が中等度以上、または5-ASA製剤無効例の場合、寛解導入療法として副腎皮質ステロイド薬の投与を考慮する。プレドニゾロン換算0.5mg〜1.0mg/kg/dayの初期投与量を1〜2週間継続し、改善があれば週5mgぐらいずつ漸減し可能な限り中止する。あるいは寛解導入療法として抗TNF-α抗体(アダリムマブ、またはインフリキシマブ)投与を行う。アダリムマブを初回160mg、2週後80mg、4週後40mgを皮下注射し、有効例については隔週40mgの皮下注射で維持治療へ移行する。またインフリキシマブ5mg/kgを使用する場合は点滴静注で0、2、6週の3回投与を行う。有効例についてはその後8週毎の維持投与へ移行する。
 副腎皮質ステロイド薬や抗TNFα抗体治療による治療に抵抗する場合、ステロイド薬を漸減中に症状が再燃する場合はアザチオプリン、6-メルカプトプリン、メトトレキサートなどの免疫調節薬の投与を考慮する。なお副腎皮質ステロイド、抗TNFα抗体、免疫調整薬を用いる場合には感染症ならびに悪性腫瘍のスクリーニングと使用後のモニタリングを行うべきである。それでも効果不十分の場合は再度手術を考慮するか、カルシニューリン阻害薬(タクロリムス、シクロスポリン)の投与を考慮する。
 成分栄養剤を用いた経腸栄養療法は寛解導入に有効な場合がある。とくに薬物治療抵抗例や重症度の高い例、狭窄など消化管障害の強い例で適応となる。また、コルヒチンを併用する場合がある。

血管型ベーチェット病の治療:静脈病変


 血管型ベーチェット病の静脈病変に対しては炎症反応を抑えるためのステロイド投与±免疫抑制剤投与と血栓形成予防のための抗凝固療法(ワルファリンなど)の併用を行うことが推奨されている。ただし、抗凝固療法の施行は、致死的な喀血につながる可能性がある肺病変合併症例、特に肺動脈瘤が存在する時には慎重を期すべきである。
 下肢深部静脈血栓に対しては、プレドニゾロン 少量〜0.5mg/kg投与に、アザチオプリン 50〜100mg、または、メトトレキサート 8〜16mg/週の併用投与が提案されている。バッドキアリ症候群などの大静脈病変に対しては、プレドニゾロン 1mg/kg投与に、シクロホスファミド点滴 500〜1000mg/2〜4週の併用投与が提案されている。いずれの場合も、寛解導入後はプレドニゾロンを漸減し、アザチオプリンやメトトレキサート併用が提案されている。治療抵抗性の静脈病変に対しては、インフリキシマブ 5mg/kgの点滴投与を検討する。リスク・ベネフィットを勘案し、インフリキシマブの早期導入を考慮しても良い。

血管型ベーチェット病の治療:動脈病変


 血管型ベーチェット病の動脈病変においては、動脈瘤の切迫破裂、血管病変による出血の場合は救命的緊急手術の適応となる。ただし、動脈病変においては、手術に伴う吻合部動脈瘤形成をはじめ、術後合併症、再発が少なくないことを考慮し、免疫抑制療法を優先し、炎症急性期の手術は可能なかぎり回避するのが望ましい。血管内治療に関しても、術後にステント起始部よりの動脈瘤の再発例が報告されており、術前よりの免疫抑制療法を開始が推奨される。
 炎症所見など疾患活動性があると判断される病変に対しては、ステロイド(プレドニゾロン 0.5〜1mg/kg)、免疫抑制療法(シクロホスファミド点滴 500〜1000mg/2〜4週など)の使用は予後の改善に寄与することが示さており、早期より積極的に使用すべきである。寛解導入後はプレドニゾロンを漸減し、アザチオプリンやメトトレキサート併用が提案されている。治療抵抗性の動脈病変に対しては、インフリキシマブ 5mg/kgの点滴投与を検討する。リスク・ベネフィットを勘案し、インフリキシマブの早期導入を考慮しても良い。

急性型神経型ベーチェット病の治療


 完全型または不全型のベーチェット病で、急性または亜急性の頭痛や局所神経症状がある場合は、脳背髄液検査を行う。脳背髄液細胞数 6.2/mm3以上で、かつ感染症を除外できた場合は、急性型神経型ベーチェット病と考え、ステロイド(中〜高用量:プレドニソロン30-60mg/日)投与を行う。シクロスポリンにより誘発された急性型神経型ベーチェット病は、シクロスポリン中止によりその後の発作はほぽ完全に抑制される。ステロイドの効果が不十分な場合は、ステロイドパルス療法、または、インフリキシマブ(5mg/s)投与を検討する。ステロイドが有効な場合は徐々に減量し、再発がなければ中止する。さらに急性期発作予防のためコルヒチンを開始し、1-2mg/日で維持する。再度、脳脊髄液検査を施行し、脳脊髄液IL-6が17 pg/ml以下であれば、急性型神経型ベーチェット病と最終診断できる。脳脊髄液IL-6が17 pg/ml以上であれば、慢性進行型神経型ベーチェット病を考慮し、精査する必要がある。

慢性進行型神経型ベーチェット病の治療


 完全型または不全型のベーチェット病で、発症時期不明の神経症状・性格変化・小脳失調を認めた場合は、慢性進行型神経型ベーチェット病を疑い、脳脊髄液検査、頭部MRI検査を行う。脳脊髄液IL-6が17 pg/ml以上、かつ、頭部MRIで脳幹部萎縮を認めた場合、または、2週間以上空けて検査した脳脊髄液IL-6がいずれも17 pg/ml以上の場合、慢性進行型神経型ベーチェット病と診断する。慢性進行型神経ベーチェット病に対してはメトトレキサートがアンカードラッグである。脳脊髄液IL-6が17 pg/ml以下になるまで増量する(最大 16mg/週まで)。これで効果不十分の場合はインフリキシマブ (5mg/s)を追加併用する。インフリキシマブが効果不十分の場合は、他の生物学的製剤を検討する。慢性進行型神経型べ一チェット病では、ステロイド、アザチオプリン、シクロフォスファミド、コルヒチンはいずれも無効であることを十分に認識する必要がある。シクロスポリンは中枢神経病変のあるベーチェット病に対しては禁忌である。

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