関節リウマチの診断について説明します。
関節リウマチ

関節リウマチ


関節リウマチ

関節リウマチ

関節リウマチとは

  原因不明の全身性の慢性の多発性滑膜炎です。滑膜とは関節の周囲を取り囲むように存在する膜で、滑膜に炎症が起きて、増殖がおきる(この状態をパンヌスと呼びます)と、関節が腫れ、関節液がたまることになります。滑膜から産生される炎症物質などの作用で痛みが生じます。ですから、関節リウマチの初期には、軟骨や骨に病変が及んでいない場合は、関節のレントゲンを撮っても異常が見られないことがあります。

関節リウマチの診断

現在一般的に、関節リウマチの診断には、1987年にアメリカリウマチ学会で作成された分類基準が使われています。

この診断基準は、
 (1)6週間以上持続する朝のこわばり(1時間以上続くこと)
 (2)6週間以上持続する3個所以上の関節の腫れ
 (3)6週間以上持続する手の関節(手関節、中手指節関節(第3関節)、近位指節関節(第2関節))の腫れ
 (4)6週間以上持続する対称性の関節の腫れ
 (5)手のエックス線写真の異常所見
 (6)皮下結節
 (7)血液検査でリウマチ因子が陽性

の7項目からできています。 このうち4項目以上満たせば関節リウマチと診断します。つまり、リウマチ因子陽性だけでは、関節リウマチと診断できないわけです。

しかし、この基準では、早期の関節リウマチを見つけることは非常に困難なため、2010年に新たにアメリカ/欧州リウマチ学会で、関節リウマチの早期分類基準が発表されました。この基準によれば、1つ以上の関節腫脹を認めれば、スコアリング(表:アメリカ/欧州リウマチ学会の新関節リウマチ分類基準)に基づき、関節リウマチと診断できます。ただし、他の関節腫脹を来たす疾患を鑑別する必要があります。他の関節腫脹を来たす疾患としては変形性関節症、全身性エリテマトーデスなどの膠原病、血管炎、痛風、ベーチェット病、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎などが挙げられます。

表:アメリカ/欧州リウマチ学会の新関節リウマチ分類基準


項目が4つに分けられています。それぞれの点数を算出し、合計が6点以上の場合に関節リウマチと診断されます。
腫れ・痛みのある関節の数 点数
中・大関節に1つ以上の腫脹または疼痛関節あり 0点
中・大関節に2〜10個の腫脹または疼痛関節あり 1点
小関節に1〜3個の腫脹または疼痛関節あり 2点
小関節に4〜10個の腫脹または疼痛関節あり 3点
1つの小関節を含む11個以上の腫脹または疼痛関節あり 5点
「中・大関節」とは肩関節、肘関節、股関節、膝関節、足関節(くるぶしの関節〉を指します。「小関節」とは手足の指・趾の関節の大部分、それに手首の関節を指します。DIP関節(指の第1関節)、第1CM関節(親指の付け根の関節)、第1MTP関節(足の母趾の第1関節)は評価対象外です。

免疫の異常 点数
リウマチ因子、抗CCP抗体ともに陰性 0点
リウマチ因子、抗CCP抗体の少なくとも1つが陽性・低力価 2点
リウマチ因子、抗CCP抗体の少なくとも1つが陽性・高力価 3点
陽性・低力価:正常上限値の1〜3倍まで。陽性・高力価:正常上限値の3倍以上。
抗CCP抗体:シトルリン化蛋白は関節リウマチにおける主要な自己免疫のターゲットであることが明らかにされ、抗CCP抗体は、シトルリン化蛋白の一つであるフィラグリンのシトルリン化部位を含むペプチドを環状構造とした抗原 (CCP:cyclic citrullinated peptide) を用いて検出される関節リウマチ特異的な自己抗体です。関節リウマチの早期診断に有用です。

症状の持続期間 点数
6週間未満 0点
6週間以上 1点

炎症反応 点数
CRP、ESRともに正常 0点
CRP、ESRのいずれかが異常 1点

この診断基準で6点以上であれば、関節リウマチと診断できるわけですが、4-5点の方が、関節リウマチではないと判断するのは非常に難しいといえるでしょう。そこで、関節炎を起こしている部位の関節MRI検査を受けることをお勧めします。関節X線検査で正常に見えても、関節MRI検査により、早期に関節リウマチの病変(びらん:骨の一部が欠けた状態、滑膜炎)が認められることがあります。

以上のように、関節リウマチには決め手となる検査はなく、総合的に判断して診断をしています。

関節リウマチの話題

関節リウマチと歯周病
 関節リウマチの発症に歯周病菌Porphyromonas gingivalisが関連している可能性が報告されています。
 http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2015/150413_1.html
 http://www.niigata-u.ac.jp/news/2017/33932/
 https://www.jstage.jst.go.jp/article/perio/54/1/54_11/_pdf

超音波より関節所見を

 関節リウマチの評価に関しては、超音波に頼らず、関節所見を大事にすべきという提言でした。

関節リウマチに伴う社会的損失と治療介入の意義
  産業医科大学公衆衛生学教室 藤野善久先生(2017年11月11日 第6回RAとIL-6研究会より)
 健康とは労働者個人が保有する経営資源(根幹資源)である。

 「プレゼンティーイズム(presenteeism)」:調子が悪くても、無理して出勤する状態
 「アブセンティーイズム(absenteeism)」:欠勤
 プレゼンティーイズムの方が、仕事の能率が低下するため、むしろ、アブセンティーイズムよりも経済的損失が大きいということがわかっている。すなわち、無理して出勤させるよりも、休ませたほうが損失を防げる場合がある。
J Occup Environ Med. 2004;46:398-412

   STD(short-term disability) 短期(3-6ヶ月)就業不能
   Absence 欠勤
   RX 薬の処方
   ER 救急
   Outpatient 外来
   Inpatient 入院

 関節リウマチ患者の就業阻害要因を見ると、疾患そのものの障害の影響ではなく、個人の状態と業務内容のミスマッチによるところが大きいことがわかった。
 良好な就業環境で仕事ができているケースでは、患者の健康と回復に寄与し、身体的なQOLにも好影響を与えているという報告もある。
 関節リウマチ患者の就業継続には、治療だけでなく就業内容に配慮すること(両立支援)も重要である。

 WFun (Work Functioning Impairment Scale) とは、産業医科大学で開発された、健康問題による労働機能障害の程度を測定するための調査票である。トシリズマブ投与により、WFunが改善したという報告を提示していた。
http://www.uoeh-u.ac.jp/kouza/kosyueis/wfun/entry1.html

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