抗リウマチ薬について説明します。
抗リウマチ薬

抗リウマチ薬


抗リウマチ薬

抗リウマチ薬

 抗リウマチ薬(ここでは化学合成された抗リウマチ薬について説明します)は、免疫系を調整、もしくは抑制して、リウマチの状態を良くする薬です。直接的な抗炎症作用はほとんどありません。このため、ほとんどの抗リウマチ薬は遅効性で、効果発現まで1〜2ヶ月を要します。最近は併用療法が注目されています。

メトトレキサート(MTX)

 関節リウマチのアンカードラッグ(最も重要な薬)であり、ファースト・チョイスの薬です。メトトレキサートで詳しく説明します。また、日本リウマチ学会からのパンフレットもダウンロードできます。

サラゾスルファピリジン(SASP)

商品名:アザルフィジンENなど
特徴:サリチル酸にサルファ剤が結合した薬剤。
対象症例:比較的早期で低〜中疾患活動性の症例が良い適応。
投与方法・量:1日2〜4錠(0.5〜1g)と日本での承認用量は1g/日と海外と比較し低用量です。
主な副作用:皮疹(特に*DIHSに要注意)、肝機能障害、口内炎、下痢、日光過敏症など。
*Drug-induced hypersensitivity syndrome(DIHS):DIHSは重症薬疹のひとつです。DIHSはSASPなどの限られた薬剤(抗けいれん剤など)の長期内服後に発症します。発症までの内服期間は3週間〜数年に及びます。いったん発症すると、一般の薬疹と異なり、SASPなどを中止しても、高熱、リンパ節腫脹、紅斑、白血球増多、肝障害、腎障害が次々に生じてきます。DIHSの発症にはヒトヘルペスウイルス6の再活性化が関与しているといわれています。
併用療法:

 早期RA患者をSASPにて治療を開始し、6か月後に治療抵抗性だった例を、SASP継続群、MTX単独療法へ変更群、MTX+SASP併用療法群の3群に分け比較検討を行いました。その後のDASの変化を見ると、明らかにSASP群、MTX群に比べ併用療法群(Comb:MTX+SASP群)で低下していました(関節リウマチが改善していました)。
Ann Rheum Dis 2007;66:235-241.

ブシラミン

商品名:リマチルなど
特徴:SH化合物。ビタミンB6欠乏症状(しびれ、味覚障害など)が出現する場合は、ビタミンB6を補充します。
対象症例:比較的早期で低〜中疾患活動性の症例が良い適応。
投与方法・量:1日300mgまで使用可能ですが、副作用(特にタンパク尿)の関係で100〜200r/日で使用されます。
主な副作用:タンパク尿、間質性肺炎、皮疹、消化管障害、黄色爪、しびれ、味覚障害など
併用療法:

 発症2年以内のMTX、ブシラミンで未治療の活動性RA患者に対し、MTX単独群、ブシラミン単独群、MTX+ブシラミン併用群の3群に分け比較検討を行いました。結果、2年後のACR20改善率はMTX群で43.5%、ブシラミン群で45.8%であったのに対し、MTX+ブシラミン群では79.2%で、有意に改善していました。
Mod Rheumatol. 2005;15(5):323-8.


 2016年に日本独自のDMARDの3 剤(TriD:MTX、SASP、ブシラミン)併用療法治療がRA 治療オプションになるかについて検討されました(JaSTAR study)。対象はSASP、ブシラミン およびMTX のうちいずれかの単剤治療に不応答な患者でRA の診断から3 年未満の患者で、3 剤併用治療またはTNF 阻害剤(インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、ゴリムマブのいずれか)による治療群にわけられました。DAS28 の結果をみると、両治療群ともに6 ヵ月、12 ヵ月目には治療前に比し有意な低下を見ましたが、両群間で効果には有意差を認めませんでした。3剤併用療法はTNF阻害剤に匹敵するという結果でした。
Mod Rheumatol, 2016; 26(1): 51-56

金チオリンゴ酸ナトリウム

商品名:シオゾールなど
特徴:金(Gold)を含む製剤ですが、抗リウマチ作用の機序は不明です。
対象症例:低〜中疾患活動性の症例が良い適応。感染症合併例にも使用可能です。
投与方法・量:1〜2週に1回10〜25mgを筋注します。効果発現は遅く、総投与量200〜300mgより、効果発現してきます。
主な副作用:皮疹、口内炎、タンパク尿、骨髄抑制、間質性肺炎など

イグラチモド

商品名:ケアラム
特徴:2012年9月に発売された新規の薬剤で、消炎鎮痛剤と同じようにプロスタンディン合成抑制効果が見られます。
対象症例:MTXとの併用効果のエビデンスがあります。生物学的製剤が効果不十分の時、追加投与にて有効な場合があります。
投与方法・量:25mgで開始し、4週以後、50mgに増量。
主な副作用:肝機能障害、リンパ球減少、ワルファリンの併用は禁忌、消炎鎮痛剤との併用要注意。
併用療法:

 MTX治療抵抗性患者をiguratimod追加群とPlacebo群の2群に分け、有効性を検討しました。結果、24週後ACR20改善率がPlacebo群で30.7%であったのに対し、iguratimod 追加群では69.5%であり、有意であったと報告されています。
Mod Rheumatol. 2013;23(3):430-439

アクタリット

商品名:オークル、モーバー
特徴:Tリンパ球の機能を抑制し、抗リウマチ作用を発現することが知られています。
対象症例:マイルドな効果。低疾患活動性の症例が良い適応。高齢者や他剤と併用で使用します。
投与方法・量:1日3錠(300mg)
主な副作用:皮膚症状、消化管障害、腎機能障害など

タクロリムス

商品名:プログラフなど
特徴:筑波山麓の土壌中の放線菌の代謝産物由来で、細胞内のFKBPというタンパク質に結合して、免疫細胞(主にTリンパ球)を活発化させる生体成分(サイトカイン)の働きを抑えます。
対象症例:単独では比較的早期で低〜中疾患活動性の症例が適応と考えられます。単独よりもMTXなど他剤との少量併用療法での有用性が高く、高齢者でも使用可能です。
投与方法・量:1〜3mg/日
主な副作用:消化管障害、腎機能障害、糖代謝異常、血圧上昇、薬剤相互作用(下表)など
併用禁忌 免疫抑制薬のシクロスポリン(サンディミュン、ネオーラル)、肺高血圧症治療薬のボセンタン(トラクリア)、カリウム保持性利尿薬(アルダクトンA等)、生ワクチン
併用注意
(タクロリムスの血中濃度上昇:副作用が出やすくなる)

高血圧の薬のカルシウム拮抗薬(ニバジール、ヘルベッサー、ワソラン等)、マクロライド系抗生物質(クラリスロマイシン、エリスロマイシン等)、アゾール系抗真菌薬(イトリゾール等)、抗不整脈薬のアミオダロン(アンカロン)、抗肝炎ウイルス薬のテラプレビル(テラビック)、グレープフルーツジュース
併用注意
(タクロリムスの血中濃度低下:効果が減弱する)
結核・抗酸菌症治療薬のリファンピシン(リファジン)・リファブチン(ミコブティン)、抗けいれん薬のフェノバルビタール(フェノバール)・フェニトイン(アレビアチン、ヒダントール)・カルバマゼピン(テグレトール)、健康食品:セイヨウオトギリソウ( セント・ジョーンズ・ワート)
併用療法:

 MTX、SASP、ブシラミンのいずれかで治療抵抗性を示す発症3年以内の活動性RA患者に対し、タクロリムス 3mg/日追加群とPlacebo群の2群に分け有効性を検討しました。結果、52週後のDAS28寛解はTAC追加群で45%、Placebo群で21%に認め、タクロリムス追加群で有意に有効性が高いと報告されました。
Mod Rheumatol. 2011;21(5):458-68.

レフルノミド

商品名:アラバ
特徴:ピリミジン合成阻害作用を持ち、免疫細胞の細胞増殖を抑制します。
対象症例:MTX単独投与で効果不十分な症例。
投与方法・量:20mg/日。日本人には間質性肺炎など副作用が多く、当初推奨されたloading dose(最初3日間 100mg/日)を用いずに少量で使用することが多くなりました。
主な副作用:間質性肺炎、催奇性、皮疹・脱毛、肝機能障害、消化管障害など。副作用発現時にはコレスチラミン投与にて除去します。




ミゾリビン

商品名:ブレディニン
特徴:糸状菌の培養液から発見された核酸合成阻害剤です。移植拒否反応の抑制、ループス腎炎にも使用されます。
対象症例:効果はマイルドですが、副作用も少ない傾向があります。比較的軽症例、高齢者が良い適応となります。他剤と併用で使用します。
投与方法・量:1日1〜3錠(50〜150mg)。
主な副作用:皮疹、消化管障害、高尿酸血症など

 その他、ロベンザリッド(商品名 カルフェニール)、オーラノフィン(商品名 リドーラ)、D−ペニシラミン(商品名 メタルカプターゼ)も関節リウマチに対し、保険適応がありますが、最近ではほとんど使用されていません。
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