関節リウマチと妊娠について説明します。
関節リウマチと妊娠

関節リウマチと妊娠


関節リウマチと妊娠
 2018年9月12日(水)国立成育医療研究センター 主任副センター長 村島 温子 先生の講演「関節リウマチ・リウマチ膠原病疾患の妊娠」、2018年9月22日(土)豊橋市民病院 リウマチ科 部長 平野 裕司 先生の講演「女性関節リウマチ患者の妊娠・出産と関節リウマチの薬物治療」を拝聴してきました。印象の残ったコメントを掲載いたします。

関節リウマチが妊娠に及ぼす影響

   関節リウマチの疾患活動性が高いと妊娠しにくくなる。
 ステロイド投与量が多いと妊娠しにくくなる。
 Ann Rheum Dis. 2015;74:1836-41


Survival curves showing the time to pregnancy (TTP) in rheumatoid arthritis (RA) patients with (A) various levels of disease activity and (B) different prednisone dosages. When the TTP exceeded 1 year, patients were considered subfertile.

 関節リウマチの疾患活動性が高いと妊娠しても必ずしも活動性は低下しない。妊娠中に寛解に至っていても、出産後に関節リウマチの活動性が上昇することがある。
 Arthritis Care & Research. 2008;59:1241-48


 出産後に、関節リウマチの活動性が上昇することがある。
 Swiss Med Wkly. 2012;142:w13644



 妊娠後にもMTXの投与を続けた場合(MTX-post)の自然流産率は42.5%で、一般の自然流産率(Non-AD:17.3%)に比べ、高かった。催奇形性率はMTX-postで6.6%で、一般の催奇形性率2.9%と比べ、やや高かった。
 Arthritis Rheum 2014;66:1101-1110
 
 

 CRIB studyにて、妊娠中にセルトリズマブ・ペゴルを投与されていても、胎児や出産後の新生児・乳児の血液中にセルトリズマブ・ペゴルがほとんど検出されないことがわかった。
 Ann Rheum Dis 2018;77:228-233
 
 

全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、若年性特発性関節炎(JIA)や炎症性腸疾患(IBD)罹患女性患者の妊娠、出産を考えた治療指針

  https://ra-ibd-sle-pregnancy.org/
1) 推奨度について
推奨文の末尾に記載された推奨度は3 つの推奨レベルを示している。原則として以下のように解釈する。
A:(実施すること等が)強く勧められる
B:(実施すること等が)勧められる
C:(実施すること等が)考慮される

(1)全身性エリテマトーデス(SLE)
 SLE 合併妊娠では母親の自己抗体の中でIgG(抗SS-A 抗体)が胎盤を介して、児に移行し、児に母体と同様のSLE 様症状を呈することがある(新生児ループス)。発症時期は、出生直後から生後3 か月頃であり、母体由来のIgG が消失する生後半年程度で軽快する。症状として完全房室ブロックや,皮膚症状,汎血球減少がある1)。完全房室ブロックは不可逆的な障害であるが,心症状以外の症状は一過性で,可逆的な障害であり生後1年までに自然に治癒する2)。
<参考文献>
1) Boh EE. Neonatal lupus erythematosus. Clin Dermatol. 2004;22:125-128.
2) 自己抗体陽性女性の妊娠管理指針の作成及び新生児ループスの発症リスクの軽減に関する研究.厚労科研報告書2013.3

(2)関節リウマチ(RA)、若年性特発性関節炎(JIA))(3)炎症性腸疾患(IBD)(クローン病(Crohn’s Disease;CD)、潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis;UC))
 母体IgG 分画の自己抗体は存在しないため、児は母体と同様の症状は呈さないが、母体に投与する薬剤の影響は考慮する必要がある。ただし、RA 合併妊娠において抗SS-A 抗体を有する場合は、SLE 合併妊娠の項目に記載の如く対応が必要である。母体が妊娠中に生物学的製剤(抗体製剤)を使用している場合、その影響が生後数か月残存している可能性があり、児の生ワクチン(BCG、ロタウイルス)の接種において注意が必要である(CQ10 を参照)。






 NSAIDSは妊娠末期には投与しない。COX2阻害剤についてはエビデンスが少ないため、妊娠初期・中期でも投与を避けるべきである。

 2018年7月タクロリムス、アザチオプリン、シクロスポリンは添付文書上でも、妊娠中禁忌がはずれた。
 メトトレキサート内服中の女性の場合、1月経周期を休薬すれば、妊娠可能となった。(以前は3ヶ月休薬が必要だった)
 また、男性の場合、メトトレキサート内服中でも、妊娠を避ける必要はないこととなった。









参照HP
国立成育医療研究センター 妊娠と関節リウマチ
https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/perinatal/bosei/bosei-riumachi.html
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