後藤内科医院、リウマチ科、内科

多発性筋炎/皮膚筋炎

多発性筋炎/皮膚筋炎

 皮膚筋炎/多発性筋炎は膠原病のひとつで、原因は不明である。1863年にWagnerが最初に報告した。多発性筋炎(Polymyositis, PM)は筋肉の炎症や変性により力が入らなくなったり、筋肉が痛くなる疾患で、多発性筋炎に皮膚病変を伴うものを皮膚筋炎(Dermatomyositis, DM)と呼ぶ。皮膚症状のみで、筋症状のない皮膚筋炎(Clinically amyopathic DM, CADM)もある。

 

皮膚筋炎/多発性筋炎 の疫学

男女比 1:2〜3 女性が多い
好発年齢 小児期(5〜14歳)
       成人期(45〜64歳)
有病率 2−5/人口10万人(推定患者数 17,000人)
  多発性筋炎・皮膚筋炎はほぼ同数
罹患率 2-10/人口100万人

 

皮膚筋炎/多発性筋炎の症状

1)全身倦怠感、体重減少
2)発熱
3)関節痛
4)筋症状
5)皮膚症状
6)咳、呼吸困難

 

皮膚筋炎の皮膚症状

1)ヘリオトロープ疹
 眼の周りのむくみを伴った赤紫色の紅斑

2)ゴットロン徴候
 膝、肘、手指の関節の伸側の紅斑

3)ショールサイン・Vサイン
 肩甲上背部の紅斑や前胸部に出現するV字型紅斑

4)爪周囲紅斑
5)Mechanic’s hands(機械工の手)
 主に母指や示指にみられる手荒れ様の角化性皮疹

 

皮膚筋炎/多発性筋炎の筋症状

1)からだの中心に近い部分(近位部) の筋力低下
 「ふとんが持ち上げにくくなった」
 「トイレのしゃがみ立ちが困難」
2)近位筋の筋肉痛
3)咽頭・食道の筋力低下
 「物が飲み込みにくい」

 

多発性筋炎/皮膚筋炎の診断基準(小児・成人統一診断基準)

「多発性筋炎・皮膚筋炎診療ガイドライン(2020 年暫定版)」より引用
www.aid.umin.jp/achievement/PMDMGL2020.pdf

 

1.診断基準項目

(1) 皮膚症状
  (a) ヘリオトロープ疹:両側または片側の眼瞼部の紫紅色浮腫性紅斑
  (b) ゴットロン丘疹:手指関節背面の丘疹
  (c) ゴットロン徴候:手指関節背面および四肢関節背面の紅斑
(2) 上肢又は下肢の近位筋の筋力低下
(3) 筋肉の自発痛又は把握痛
(4) 血清中筋原性酵素(クレアチンキナーゼ又はアルドラーゼ)の上昇
(5) 筋炎を示す筋電図変化*1
(6) 骨破壊を伴わない関節炎又は関節痛
(7) 全身性炎症所見(発熱、CRP 上昇、又は赤沈亢進)
(8) 筋炎特異的自己抗体陽性*2
(9) 筋生検で筋炎の病理所見:筋線維の変性及び細胞浸潤

 

2.診断のカテゴリー

 皮膚筋炎:18 歳以上で発症したもので、(1)の皮膚症状の(a)〜(c)の1項目以上を満たし、かつ経過中に(2)〜(9)の項目中 4 項目以上を満たすもの。18 歳未満で発症したもので、(1)の皮膚症状の(a)〜(c)の1項目以上と(2)を満たし、かつ経過中に(4)、(5)、(8)、(9)の項目中 2項目以上を満たすものを若年性皮膚筋炎とする。
 なお、上記の項目数を満たさないが、(1)の皮膚症状の(a)〜(c)の 1 項目以上を満たすものの中で、皮膚病理学的所見が皮膚筋炎に合致するか*3(8)を満たすものは無筋症性皮膚筋炎として皮膚筋炎に含む。

 

 多発性筋炎:18 歳以上で発症したもので、(1)皮膚症状を欠き、(2)〜(9)の項目中 4 項目以上を満たすもの。18 歳未満で発症したもので、(1)皮膚症状を欠き、(2)を満たし、(4)、(5)、(8)、(9)の項目中 2 項目以上を満たすものを若年性多発性筋炎とする。

 

3.鑑別診断を要する疾患

 感染による筋炎、好酸球性筋炎などの非感染性筋炎、薬剤性ミオパチー、内分泌異常・先天代謝異常に伴うミオパチー、電解質異常に伴う筋症状、中枢性ないし末梢神経障害に伴う筋力低下、筋ジストロフィーその他の遺伝性筋疾患、封入体筋炎、湿疹・皮膚炎群を含むその他の皮膚疾患
 なお、抗 ARS 抗体症候群(抗合成酵素症候群)、免疫介在性壊死性ミオパチーと診断される例も、本診断基準を満たせば本疾患に含めてよい。

 

*1
若年性皮膚筋炎および若年性多発性筋炎で筋電図の施行が難しい場合は、MRI での筋炎を示す所見(T2 強調/脂肪抑制画像で高信号,T1 強調画像で正常信号)で代用できるものとする。
*2
ア) 抗 ARS 抗体(抗 Jo-1 抗体を含む)、イ) 抗 MDA5 抗体、ウ) 抗 Mi-2 抗体、エ)抗 TIF1γ抗体、オ) 抗 NXP2 抗体、カ) 抗 SAE 抗体、キ) 抗 SRP 抗体、ク) 抗 HMGCR 抗体。
*3
角質増加、表皮の萎縮(手指の場合は肥厚)、表皮基底層の液状変性、表皮異常角化細胞、組織学的色素失調、リンパ球を主体とした血管周囲性あるいは帯状の炎症細胞浸潤、真皮の浮腫増加、ムチン沈着、脂肪織炎あるいは脂肪変性、石灰沈着などの所見の中のいくつかが認められ、臨床像とあわせて合致するかどうかを判断する。

 

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