後藤内科医院、リウマチ科、内科

オルミエント全国講演会

オルミエント全国講演会

 2017年7月22日(土) オルミエント全国講演会に参加してきました。以下の講演を聴いてきました。印象に残ったコメントを記載します。
 オルミエント(商品名)は一般名をバリシチニブ(baricitinib)といい、JAKを阻害することにより、炎症を抑える経口薬剤です。2017年7月に製造承認されました。
 1日1回4mgを内服し、患者さんの状態によって、2mgに減量することが可能です。中等度の腎機能障害の方は2mgから開始します。
 詳しくは次のHPを参照してください。(医療関係者用のみしかまだHPがありません)

 

EULAR Recommendation 2016 

慶応義塾大学医学部リウマチ内科 竹内 勤先生

 
EULAR Recommendation 2013

 

EULAR Recommendation 2016

 

 Phase1においてEULAR Recommendation 2016がEULAR Recommendation 2013と異なる点を2点説明されていました。
 

その1
 EULAR Recommendation 2013ではステロイド併用が±だったのが、EULAR Recommendation 2016では+となった背景には以下の論文(IDEA study)が発表されたことが関与しているとのことでした。しかし、日本人の場合、まだステロイドをどのように使用すべきかというエビデンスがなく、特に低身長、低BMIの人では骨粗鬆症を合併する危険率が高いので(日本人ではビタミンDレベルが海外に比べ低いことも関連しています)、早期の関節リウマチにステロイドを併用するのは慎重に考慮したほうがよいという、竹内先生のご意見でした。
Remission induction comparing infliximab and high-dose intravenous steroid, followed by treat-to-target: a double-blind, randomised, controlled trial in new-onset, treatment-naive, rheumatoid arthritis (the IDEA study)
Ann Rheum Dis 2014;73:75-85
 未治療の新規関節リウマチ患者(112例)に対し、MTX+インフリキシマブ群とMTX+メチルプレドニゾロン250mg単回静注群を78週にわたって比較検討した二重盲検試験です。50週時点でのDAS44寛解達成率はMTX+インフリキシマブ群 49%、MTX+メチルプレドニゾロン250mg単回静注群 36%(p=0.082)で、78週時点ではそれぞれ48%, 50%(p=0.792)で有意差はありませんでした。50週時点でのX線の平均変化(mTSS)もMTX+インフリキシマブ群 1.20、MTX+メチルプレドニゾロン250mg単回静注群 2.81(p=0.132)で、有意差はありませんでした。このことから、メチルプレドニゾロン250mg単回静注療法は、早期関節リウマチに対し、有効な治療法であると結論付けています。

 

 

その2
 MTX使用可能の患者に対し、EULAR Recommendation 2013ではMTX単独で効果不十分の場合、csDMARDSを併用するとなっていましたが、EULAR Recommendation 2016ではcsDMARDSの併用が削除されている背景には以下の論文(CareRA trial)が発表されたことが関与しているとのことでした。

Ann Rheum Dis 2015;74:27-34
 290例の未治療のHigh riskの新規関節リウマチ患者に対し以下の3群にわけて治療を行いました。16週時点でのDAS28-CRP寛解率は下図のごとく、3群間で有意差(p=0.713)はありませんでしたが、有害事象はCOBRA Classic 61.2%, COBRA Slim 46.9%, COBRA Avant-Garde 69.1%,に認められ、COBRA Slimで有意に(p=0.006)有害事象が少なかったという報告でした。すなわち、MTX + ステロイド投与併用時では、MTXにcsDMARDSであるサラゾスルファピリジンを加えても、レフルノミドを加えても有効性は変わりなく、むしろMTXのみの方が有害事象が少なかったと結論付けています。

 

COBRA Classic MTX 15mg/週、サラゾスルファピリジン 2g/日、経口ステロイド(60-40-25-20-15-10-7.5mg/日と1週ずつprednisoneを漸減し、28週まで7.5mg/日を維持した後、漸減中止)。
COBRA Slim MTX 15mg/週、経口ステロイド(30-20-12.5-10-7.5-5mg/日と1週ずつprednisoneを漸減し、28週まで5mg/日を維持した後、漸減中止)。
COBRA Avant-Garde MTX 15mg/週、レフルノミド 10mg/日、経口ステロイド(30-20-12.5-10-7.5-5mg/日と1週ずつprednisoneを漸減し、28週まで5mg/日を維持した後、漸減中止)。

 

 

オルミエントの作用機序

産業医科大学第1内科学講座 田中良哉先生


 オルミエントはJAK1およびJAK2を阻害することにより(トファシチニブはJAK1、2、3を阻害する)、インターフェロンγ、IL-6、GM-CSFなどの炎症性サイトカインのシグナル伝達を抑制し、炎症細胞の活性化や免疫細胞の増殖を抑制します。JAK1,2阻害により、倦怠感の改善、食欲不振の改善が認められます。

 

オルミエント第III相臨床試験RA-BEAM試験を読み解く

産業医科大学第1内科学講座 田中良哉先生


 MTX効果不十分例に対するバリシチニブの有効性を検討する国際共同研究で、1305例(うち日本人249例)の関節リウマチ患者が参加しました。

N Engl J Med 2017;376:652-62
 田中先生はこの論文のLast authorになっていました。

 バリシチニブ 4mg + MTX、アダリムマブ 40mg/2週 + MTX、プラセボ + MTXの3群で比較検討したところ、12週後のACR20改善率はバリシチニブ 4mg + MTX群(69.6%)、アダリムマブ 40mg/2週 + MTX(61.2%)群はプラセボ + MTX群(40.2%)に比べ有意に高いことが示されました。また、バリシチニブはアダリムマブに対する非劣性が示されました(バリシチニブのほうがアダリムマブより効いているんじゃないかと私は思いましたが)。

 

第III相臨床試験の結果からオルミエントのbest useを考える

慶応義塾大学医学部リウマチ内科 竹内 勤先生

RA-BEGIN

Arthritis Rheum 2017;69:506-517

 

 DMARD未治療例に対するバリシチニブの有効性を検討する国際共同研究で、584例(うち日本人104例)の関節リウマチ患者が参加しました。

 バリシチニブ 4mg単独、バリシチニブ 4mg + MTX、MTX単独の3群で比較検討したところ、24週後のACR20改善率はバリシチニブ 4mg単独群(76.7%)、バリシチニブ 4mg + MTX群(78.1%)はMTX単独群(61.9%)に比べ有意に高いことが示されました。(MTXを併用しなくても、バリシチニブ単独でも有効なんじゃないかなと私は思いました。)

 

RA-BUILD

Ann Rheum Dis 2017;76:88-95

 

 csDMARDS効果不十分例(MTXのみ 49%、MTX + 他のcsDMARD1剤 23%、MTX以外のcsDMARDS1剤 16%、DMARDS未治療 7%)に対するバリシチニブの有効性を検討する国際共同研究で、684例(うち日本人21例)の関節リウマチ患者が参加しました。

 バリシチニブ 2mg + csDMARD、バリシチニブ 4mg + csDMARD、プラセボ + csDMARDの3群で比較検討したところ、12週後のACR20改善率はバリシチニブ 2mg + csDMARD群(65.9%)、バリシチニブ 4mg + csDMARD群(61.7%)はプラセボ + csDMARD群(39.5%)に比べ有意に高いことが示されました。(バリシチニブ 2mgでも十分有効なのではないかと私は思いました。)

 

RA-BEACON

N Engl J Med 2016;374:1243-52

 

 生物学的製剤効果不十分例に対するバリシチニブの有効性を検討する国際共同研究で、527例(うち日本人20例)の関節リウマチ患者が参加しました。


 バリシチニブ 2mg + csDMARD、バリシチニブ 4mg + csDMARD、プラセボ + csDMARDの3群で比較検討したところ、12週後のACR20改善率はバリシチニブ 2mg + csDMARD群(48.9%)、バリシチニブ 4mg + csDMARD群(55.4%)はプラセボ + csDMARD群(27.3%)に比べ有意に高いことが示されました。(やはり、生物学的製剤効果不十分例では、MTX効果不十分例やDMRAD未治療例に比べ、バリシニチブの有効性が少し劣っているなと私は思いました。)

 

オルミエントの安全性〜臨床試験の併合解析結果〜

東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター リウマチ性疾患薬剤疫学研究部門特任教授 針谷正祥先生


 国内外の第II/III相試験に参加した約3500例の対象症例において、副作用発現率は41.5%でした。
 注目すべき副作用としては、6例(1例死亡)に結核が見られ、肺外結核が多かったそうです。
 トファシチニブと同じように帯状疱疹の発生率が高く、日本人では欧米人に比べ、発生頻度が高かったそうです。

  帯状疱疹発生率
全体 3.9%
日本人 8.2%

 

肝障害も日本人で比較的多い副作用ということでした。さらに、5例の間質性肺炎の症例が認められましたが、その内4例が日本人だったそうです。
 そのほかに注意すべき副作用としては静脈血栓症/肺塞栓症があげられていました。

 

 

 

 

 

 

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